YAMAHA NS-1000M ウーハーのオーバーホール(7月のスピーカーユニット修理記録)

7月の修理事例の紹介は YAMAHA NS-1000M のウーハー JA3058A の修理です。

YAMAHA NS-1000M は硬派な外観がかっこよく、NS、つまりナチュラルサウンドを目指した音が特徴のスピーカーで、通称センモニあるいはセンモニター。

オーディオラボオガワスピーカーサービスで修理させていただいた YAMAHA NS-1000M

1974年から97年までなんと、23年間にわたって販売されました。

スウェーデン国営放送やフィンランド国営放送でモニタースピーカーとして使用されたことが有名ですね。

私たちがいつもお世話になっている「YAMAHAの生き字引(と私たちが呼んでいる)」Iさんと当社のスピーカー修理歴25年の佐藤によると、23年間、特筆すべきユニットの仕様変更はなかっただろう、とのことです。

今でも 1000M のご愛用者様はかなり多く、当社には「当時の購入価格より高くなってもいいから修理をして使いたい」というご依頼がたくさん届きます。

初期のものだと製造からすでに40年以上経過しているわけですので、当然、異常が出ておかしくありません。

想い出のつまった「センモニ」をいい音で鳴らしたい。
そんなお客様の気持ちに応えるべくレリック スピーカー修理工房では、細心の注意を払いながら修理をさせていだいています。

では、今回はウーハーの修理にスポットを当ててご紹介します。
お客様のご依頼は、錆の除去とクリーニングを含むメンテナンスでした。

YAMAHA NS-1000M のウーハー JA3058A は布エッジです。
ウレタンエッジのように劣化して崩れてくるということはありません。

当モデルの修理ご依頼内容の多くは、酸化物、赤錆の除去、そして磁気ずれによる固着解消です。

今回は磁気ずれによる固着はありませんでしたが、赤錆がかなり進んでいましたので、通常のオーバーホール・動作調整という修理過程の中で、脱磁後いったん磁気回路をバラバラにし、再度組み立て、着磁するという工程が必要でした。
さらに前面フレームの再塗装もさせていただき、外観もとてもきれいになりました。

写真とともに順を追ってご紹介します。

まずはお預かり時。
コーン紙は退色してしまっていますが、当社ではコーン紙の着色は行っておりません。
着色を行うとコーン紙の紙質、質量が変わってしまい、音に直接の影響を及ぼしてしまうと考えているためです。

YAMAHA NS-1000M のウーハー  JA3058A

前面フレームも酸化で黒ずんでいます。
金網ネットにも錆が浮いてきているのが見えるでしょうか。
フレームとネットの塗装は音には影響ありませんので、お客様のご希望により再塗装いたします。

フレームとネットの酸化

そして大事な磁気。
外側から見るだけでもかなり酸化しているのがわかります。

磁気外周が酸化、腐食
ボイスコイルが入るギャップにも酸化物が確認できます

通常のオーバーホールでは、ギャップ側からクリーニングを行いますが、今回はギャップの奥底までかなりの赤錆が確認できましたので、磁気をいったん脱磁してバラバラにする必要がありました。

ギャップ内に錆があると、異常音の原因となるだけでなく、ボイスコイルを傷付けてしまいます。

ひどいときは、酸化物とボイスコイルがこすれあい、断線してしまうこともあるのです。

私たちがオーディオラボオガワ時代から「徹底した磁気回路のオーバーホール」を必須作業としている理由がこれです。

さて。
脱磁後、ばらします。
全部のパーツが酸化しています。

赤錆、白いぷつぷつ

上写真の一番左のパーツの「ポール部分」にボイスコイルが入ります。こんなに錆びているとボイスコイルに傷がついたり、音に異常が出たりするのは想像に難くありませんね。

酸化物を除去します。
力も根気も必要です。
パーツを傷つけないように、丁寧に作業を進めます。

錆を除去したら防錆処理をほどこし、磁気を組み立て、着磁します。
ここまできて、元通りの磁気回路になります。

次はフレーム(シルバーの部分)の塗装をし、クリーニングしたコーン紙を戻します。
コーン紙をフレームに貼る過程で、センター出しを行います。
フレームがきれいなので、貼る作業はいつも以上に緊張します。

音が決まって、接着が落ち着いたら、最後にこちらも錆を落として再塗装した金網ネットを装着。

ようやく、音、外観ともにメンテナンスが完了しました。

フレームもネットも錆がなくなりこんなにきれいになりました
磁気もこのとおり 防錆処理も施しています
色があかるく飛んでいますが…メンテナンス完了です

NS-1000M はエンクロージャーが密閉型のため内部の湿気が抜けにくく、どうしても錆が発生しやすい構造と言えます。
そして日本は高温多湿。

特に劣悪な環境に置いていた、ということではなく、日本の一般的なご家庭でお使いであれば、残念ながらこのような錆は避けては通れないようです。


YAMAHA NS-1000M のウーハー JA3058A 
修理概算価格

磁気回路オーバーホール、動作調整一式 1本 26,000円(税抜)~
(酸化の度合いにより加算あり)


上記一式には、脱磁・磁気調整・着磁、前面フレーム再塗装、金網ネット再塗装は含みません。

個体により磁気の酸化、パーツの劣化状態はさまざまですので、正式なお見積りは現物確認の上お知らせ致します。

お気に入りの NS-1000M のメンテナンスをお考えの方は、お気軽に お問い合わせ ください。現在、エンクロージャーごとの修理をおうけすることができませんが、ユニット、ネットワークは随時受付しております。