スピーカーの修理において変えることと変えないこと

修理を待つ名ユニットたち

当社の前身オーディオラボオガワのスピーカー修理部門も含めると、私たちのスピーカー修理の経験は25年になります。

これまでいろんな種類、症状のものをお預かりし、その年数分の経験を蓄積してきましたが、お預かりする修理ご依頼品は私たちの経験超え、古いもの、劣化しているものが年々増えてきています。

そのため、これまでやってきた手法に固執していてはうまくいかなかったり、時間がかかりすぎたりすることもでてきますので、常にスタッフ間で意見交換をしてよりよい手法を選択するようにしています。

例えば、使用する道具を変えます。
以前は存在しなかった道具も、改めて探すと適切なものを見つけられることがあります。

例えば、作業の順番を変えます。
これまでAという工程のあとBという工程に進んでいたのを逆にしてみると、よりスムーズに進行することがあります。

もちろん、何かを変更するときはいきなりお客さまのものを使わせていただくことはなく、当社の手持ちのものを使用してテストを行います。経時変化やその後の工程への影響を確認しながら慎重に検証したうえで、変更を行っています。

このように、信頼しているスタッフ、経験豊富なスタッフ間で常にコミュニケーションをとりながら少しでも改善、進化できるようにと日々取り組んでいますが、その中でも「これは変えない」ということがレリック には存在します。

それは、

●オリジナルに準じること

●外観を美しく仕上げること

●長くお使いいただけるようにすること

●再度手を入れやすくすること

です。


修理ですので、当然「可能な限り」という前提がつきますが、それでも極力これらのベースのうえで修理手法の改善を行っています。

これらは私たちの 修理ポリシー でも紹介していますが、そこでは「再度手を入れやすくすること」には触れておらず、またこれは修理者の視点だと思いますので、今回少し補足をさせていただきます。

スピーカーはオーディオ製品の中でも比較的シンプルな作りで、構造も昔からそう大きくは変わっていません。そのため適切にメンテナンスをすれば長い間使い続けることができます。

実際、かつてオーディオラボオガワでエッジ交換を含むメンテナンスをさせていただいたJBL 4343、4344などのユニットは、「またエッジを貼り替えて欲しい」という2回目の修理ご依頼が多くなってきました。

もしもこの1回目の修理時に「扱いやすいから」「入手しやすいから」という理由だけで安易に修理部材を選定したり手法を決定していたら、2回目の修理は困難になっていたと思いますが、オガワで修理した個体は今、2回目の修理も十分に行うことができます。

このように、今、私たちがメンテナンスさせていただいている古き良きスピーカーをこれからも長くお使いいただき、将来「再度」修理が必要になったらまたきちんと手を入れることができるようにしておく、というのはレリックがとても大切にしていることです。

「再度」は、今のオーナーさまが手放した後の次のオーナーさまの時かもしれません。

それは今のオーナーさまのお子さんかもしれないし、お孫さんかもしれないし、まったく別の外国の方かもしれません。

そんな未来も想像しながら、私たちは修理をしています。

私たちが関わらせていただいたスピーカーが、これからも必要なタイミングで適切なメンテナンスを受け、ながく愛され続ければうれしく思いますし、そのメンテナンスをする誰か(レリックであろうとなかろうと)が気持ちよくスムーズに修理ができればいいなと思っています。