JBL S3100、4344Mk2 などの15インチ(38cm)ウーハー、ME150H / ME150HS の修理実例をご紹介します。本ユニットは、2020年に入ってから目立って修理のご依頼が多くなり、年明けから2月20日までで5ペアお預かりしています。
この15インチ(38cm)のウーハー ME150H /ME150HS は、コーンからエッジにかけて表面に JBL 独自のアクアプラスコーティングが施されています。下の写真がオリジナルの状態ですが、特にエッジに注目してください。コーンと同じ表面の質感でがっちりコーティングされているのが見えるでしょうか。
このエッジは、JBL 2231A や 2235H のウレタンエッジよりも固く丈夫に見えますが、やはり通常のウレタンエッジと同様に劣化していきます。
このエッジはハーマンからの供給はなく、またリコーンキット(コーン一式)の供給もすでに完了してしまったため、当社ではコーンはそのまま温存し、ウレタンエッジにてエッジを交換させていただきます。
また、このユニットのもうひとつの特徴として一般的な 2231A などのJBLのユニットと異なりダンパーとフレームが「溶剤が効かない接着剤」で接着されているということがあります。フレームからダンバーを剥離できないということは、つまりギャップ(ボイスコイルが入る隙間)の清掃ができないことを意味します。
しかし、後述しますが、発売から時間もたち、ギャップは酸化しています。そこで当社では、ダンパーの温存をあきらめ、ダンパーを代替品と交換することを前提にオーバーホール・修理をさせていただいています。
下の写真がコーンを外した磁気です。ダンパーを温存して剥離できないため、ダンパーを切ってしまい、コーンを外しています。
当社がこの考え、手法に至った経緯は当社お知らせブログ JBL ME150H (S3100、4344Mk2などのウーハー)のエッジ貼り替え修理について に記載してありますのでよろしければご覧ください。
では、内部の酸化を確認します。まずはユニットを裏返してみます。底の穴を除いてみると白いモヤモヤしたものが確認できます。
このモヤモヤは酸化物ですが、この穴とギャップはつながっているため、ギャップ内に移動する可能性もあります。この酸化物もしっかり除去します。
ユニットを表向きにして、劣化したエッジを除去しダンパーを切除します。そしてフレームからコーンを抜き取ると、ギャップ内、ギャップ周りにも酸化物があることが確認できます。
ギャップを含む磁気を丁寧にクリーニングしました。ギャップ内に酸化物、鉄粉、異物がないことを確認したら防錆処理を施します。これでボイスコイルの動作を妨げるものはなくなりました。
コーン側も異常がないかを確認します。特にボイスコイルは、傷、変形、接着不備などがないかを注意深く確認します。異常がないことを確認したら、新しいウレタンエッジとダンパーを貼ります。
こうしてコーン一式が準備できたら、クリーニングが終わった磁気に貼り、動作調整をします。
なお、ウレタンエッジは当社の前身オーディオラボオガワにて独自に起型し、作成したウレタンエッジを使用します。これは JBL のオリジナルウレタンエッジに準じたものを目指して作成したものです。
アクアプラスコーティングされたオリジナルとは異なったエッジとなりますが、4344Mk2やS3100といった素晴らしいスピーカーをこれからも鳴らしていただけるよう、このような修理をさせていただいております。ME150H / ME150H Sのエッジ劣化にお困りの方はお気軽に お問い合わせ ください。
JBL ME150H /ME150HS 1本の修理概算価格
基本修理:エッジ貼り替え(オーバーホール、ダンパー交換、動作調整含む)一式 52,000円
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※ユニット個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。