2020年末にまとまって3件のご依頼をいただいた ALTEC 604-8G 用ネットワークについてご紹介します。
このネットワークは非常にシンプルな構造ですが、特定の箇所が不良になることが多い機種です。
コンパクトな外観ですが、内部はみっちりと素子が詰まっています。
604-8G 同軸ユニットと共に ALTEC 620A monitor などに組み込まれていました。
クロスオーバー周波数は 1.5KHz です。
では、今回は埼玉県のNさまのご承諾を得て、実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします。
まず、動作チェックを行います。
低域、高域共に左右で音圧差が発生しています。また、アッテネーターを回すとザリザリとノイズが乗ります。
異常の原因を探るべく外部ケースを外します。
内部素子をチェックします。
目視でコンデンサーから何かが析出しているのがわかります。
内容物でしょうか。
数値をあたると、左右共大幅に定格値と異なっています。
ALTEC 604-8G用 や 604-8H用 のネットワークにはこのタイプのコンデンサーが良く使われていますが、前述のとおり両機種ともこのコンデンサーが不良の場合が多いです。
一見経年劣化しないといわれるフィルムコンデンサーに見えますが、湿気などの外的要因に致命的に弱いといった欠点のあるコンデンサーなのでしょうか。
当社のオーバーホールでは「オリジナル尊重する」という観点から、正常な素子は最大限残し、手を入れるのは最小限ですませるようにしておりますが、この機種に限ってはすべての素子交換を行っております。今まで数多くお預かりした同機種でほぼすべてのコンデンサーが何らかの不良になっていることがその理由です。
アッテネーター不良はオーバーホールを行う際に代替品が使用できる限り、すべて交換します。
アッテネーターは構造上、接点が擦れて摩耗する構造になっています。摩耗、消耗する以上は新品に交換することが最良という考え方です。
代替品取り付けのためにはシャーシを少し加工する必要があります。コンパクトなため部品を取り付けるにも一手間が必要です。
アッテネーターを交換しました。
加工したシャーシに新しいアッテネーターがきっちり収まりました。
本当にスペースの確保が大変です。
コンデンサーも交換完了です。
もちろん劣化した半田をすべて打ち直し、ターミナルもクリーニングし接点もきれいに改善しています。
機器にて動作チェック後、実音でチェックし、エージングに入ります。
エージング後、再度動作チェックを行い、経時による異常がないことを確認して修理完了となります。
この ALTEC 604-8G 用ネットワークのように、特定の箇所が弱いネットワークも多くあります。
アッテネーターやスイッチなど物理的に破損や不良が起きるものや、コンデンサーや抵抗など電気的に不良が起こるものなど様々です。
ユニットとネットワークの両方が正常で初めてそのスピーカー本来の音が出力されると思います。ネットワーク単体でのチェック、オーバーホールはもちろんのこと、ユニットをお預かりする際に合わせてネットワークも確認、オーバーホールをご検討ください。
※ユニット 604-8G は、ビリ付きや高域の音が出ないというご相談を多数いただきます。 ALTEC 604-8G の修理実例と価格 もご覧ください。
興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。
ALTEC 604-8G用ネットワーク 1本の修理概算価格
基本修理:不良素子交換、半田打ち直し、劣化端子交換、動作調整 一式 18,000円(税込 19,800円)
※交換部品代は別途
ネットワークは左右のペア調整が必須のため必ずペアでのお預かりとなります。そのため、修理概算価格は 18,000円×2本=36,000円 (税込 39,600円)程度、プラス交換部品代とお考えください。
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。