発売から40年以上経った現在でも修理お問い合わせが多い、日本を代表する名機 YAMAHA NS-1000M のネットワーク修理をご紹介します。
YAMAHA NS-1000M のネットワークはターミナルと一体型。スピーカーターミナルの裏側にネットワークがついています。
背面バッフルより取り付けビスを外すとすんなり外れます。
ただし内部配線がはんだ付けになっていますので、ネットワークを取り出すためには配線をすべてカットし、取り付け時に再度はんだ付けすることが必要です。
今回は神奈川県 Aさま他のご承諾を得て、実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします(わかりやすさを重視し、数名の方の写真を使用させていただきます)。
まずは動作チェックを行います。
このネットワークは、低域、高域で使用している電解コンデンサーが劣化していることが多いのですが、今回は低域、中域は問題なし、高域は左右で音圧差が発生しています。また、アッテネーターを回すとザリザリとノイズが乗ります。
低域、中域は現状のままとし、高域の音圧差解消を行い、アッテネーターは接点のクリーニングを行いノイズの解消を行うこととします。
ひっくり返すと特徴的な6基並列に並んだ中域用コンデンサーが現れます。
基板上の丁寧な説明プリントを見ると日本製だなと感じます。
内部素子をチェックします。高域側 2.7μF のコンデンサーが劣化しているようです。使われているのは電解コンデンサーのようです。経年劣化で劣化したものと思われます。
さらに、目視確認すると中域側コンデンサーを繋ぐすず線が錆びて劣化しているのがわかります。
NS-1000Mのネットワークはこの線が錆びて劣化していることが非常に多く、当社オーバーホールではこの線の交換は必須になっています。
新たにすず線を交換しました。
きれいになって断線の恐れもなくなり本来の働きをしてくれそうです。
続いてアッテネーターのクリーニングです。
下部の隙間からノズルを入れます。このアッテネーターは軸部にグリスが塗ってあり、それが長年の使用で接点側に移動、硬化して接触を阻害することが多いです。そのため、念入りに洗い流し異物が残らないようにクリーニングします。
これでノイズが解消しない場合はすべてバラしてパーツ一点一点をきれいにします。今回はバラさずにノイズを解消できました。
本当であればアッテネーターごと交換したいところではありますが、純正品はとうの昔に供給を終えています。 代替品もなかなか規格や寸法が合うものがないため、クリーニングして再利用しています。
上の写真はアッテネーターを分解した際に撮影したもので、最初のクリーニングでノイズが取り切れず内部の接点をクリーニングしているところです。右上の巻き線部をよく見ると緑錆が発生しています。中央下のものは完了品です。分解→清掃→組立で非常に手間がかかります。
アッテネータープレートもクリーニングします。白っぽく劣化したプレートも艶を取り戻しました。
すべての修理が完了しました。
機器チェック後、実音チェック、そしてエージングに入ります。エージング後さらに動作チェックを行い、経時による問題再現がないことを確認して完了となります。
YAMAHA NS-1000Mはネットワーク単体でお預かりすることは滅多にない機種ではありますが、ユニットと共に継続的にお問い合わせのあるスピーカーです。
大切に所有されてる方が多いスピーカーだなと感じますし、状態の良いものも多いのですが、製造されて40年以上経ているスピーカーですので、各部の劣化や酸化は進行しています。ネットワークのオーバーホールに興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。
YAMAHA NS-1000M ネットワーク 1本の修理概算価格
基本修理:不良素子交換、半田打ち直し、劣化端子交換、接点クリーニング、動作調整 一式 21,000円(税込 23,100円)
※交換部品代は別途
基本的にネットワークは左右のペア調整が必須のため、必ずペアでのお預かりとなります。
そのため、修理概算価格は 21,000円×2本=42,000円(税込 46,200円) 程度とお考えください。
また、オーバーホール時にスピーカーターミナルの交換も承ります。当社では WBT のターミナル で交換させていただいております。
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。