2020年に入り特に修理ご依頼の多い TANNOY MonitorGold(タンノイ モニターゴールド)15 用ネットワークのオーバーホールについて、担当者よりご紹介いたします。
通常、ネットワークはスピーカーエンクロージャーの中にあるため、あまり目にする機会はないかと思いますが、各部劣化や酸化が進行していますので、快適にお使いいただくためにはユニット同様、オーバーホールが必要です。
さて、今回ご紹介するのはコンパクトながらTANNOY社のノウハウが詰まったネットワークです。
特徴的な2個のロータリースイッチで高域側の1KHz~20KHzまでレベル全体の増減と5KHz以上の周波数の減衰を調整することができます。
不具合で多いのがこのロータリースイッチのガリノイズや、内部素子に起因する左右の音圧差です。
スイッチを触った際にザリザリとノイズが乗ったり、低高域共に左右にバラツキがあり「おかしい」と感じられて修理のご依頼をいただくことが多いようです。
今回は宮崎県のI様のご承諾を得て実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします。
このケースに入ったタイプは MonitorGold ⅢLZ用 のネットワークとして修理のご依頼をいただくことも多いです。
まずはじめに動作チェックを行いますが、今回は低域、高域共に左右で音圧差が発生しています。
異常の原因を探るべく外部ケースを外します。
ケースはビス穴部のハトメで止めてあるため4か所のハトメを外す必要がありますが、 取り除くには工夫が必要です。
内部素子をチェックします。緑色が抵抗、左右の端に低、高域それぞれのコイル、傍の黄色が電解コンデンサー、中央にフィルムコンデンサーがコンパクトに収まっています。これを1つづつチェックしていきます。
音圧差の原因として電解コンデンサーが劣化し大幅に数値がずれています。他にも低域側のコイルに少々の相違が見られました。今回は異常なコンデンサーの交換とコイルの調整を行うことになりました。
低域のコイルを基板より外しました。左右の性能を正値に合わせるために一度コイルを分解し調整して再度組み直します。
ロータリースイッチをチェックしてみると動作時にガリが発生しています。
1か所は錆で完全に固着し動きませんでした。本来は接点クリーニングを行い改善する部品なのですが今回は流石に改善が見込めないため全て代替品への交換を行います。
オーバーホール完了後の内部です。不良コンデンサーを新しいものへ交換しています。電解コンデンサーは今回のように経年によって劣化している恐れが非常に高くチェックする場合も最優先です。
調整を終えたコイルです。テープが変わっています。左右の特性はバッチリです。数値としては微々たる差異でしたが、この差が大きな乱れとなって聴感上影響してくることもあります。
ロータリースイッチも交換完了です。ガリも全く発生せず、スムーズに動作します。劣化した半田もすべて打ち直し、接点もきれいに改善しています。
修理完了品です。機器チェック後、実音チェックを経てエージングに入ります。
動作チェックを行い、経時による問題がないことを確認して修理完了です。
「オリジナリティの尊重」の理念の元、正常な素子は最大限残し最小限の手入れで済ますようにしております。しかし、スピーカーの発売から長い年月が経ち劣化は進んできていると感じます。理論的には劣化する恐れがないものでも外的要因等で劣化している場合も多いです。
ネットワークもユニットと同様の時間を経ております。
ネットワーク単体でのチェック、オーバーホールは勿論、ユニットをお預かりする際に合わせてネットワークも確認、オーバーホールをご検討頂くことをお勧めいたします。
興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。
TANNOY MonitorGold15用ネットワーク 1本の修理概算価格
基本修理:不良素子交換、半田打ち直し、劣化端子交換、動作調整 一式 16,000円
※交換部品代は別途
ネットワークは左右のペア調整が必須のため必ずペアでのお預かりとなります。
そのため修理概算価格は 16,000円×2本=32,000円 とお考えください。
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。