TANNOY(タンノイ)の創始者であるガイ・R・ファウンテンの名をつけた銘スピーカー「GRF Memory」の修理をご紹介します。

1926年に英国で誕生したTANNOY。1974年、やむなく米国に売却されましたが、1978年には新経営陣が米国からタンノイを買い戻し、1981年「GRFメモリー」で職人芸を復活させた…というストーリーにも想いを馳せ、丁寧にメンテナンスさせていただきました。

レリックですべての修理完了後のTANNOY GRFMemory正面
レリックでオーバーホール後のTANNOY GRFメモリー

今回は愛知県のAさまからお預かりしたスピーカーにて、実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします。
なお、愛知県からは当社のスピーカー輸送専用箱を使用し、ピアノ搬送にてお預かりいたしました。大型スピーカーのため、輸送箱も車輪付きの特大サイズです。

特大輸送箱に入って愛知県から到着したTANNOY GRFMemory。
愛知県から到着したTANNOY GRFMemory

さっそく、状態を確認しますと、動作的にはユニット3839Mの高域片側異常、低域左右共異常音、ネットワークは素子不良による低域音圧差、などがありました。
動作チェック、外観チェックが終わったら、経験豊富なスタッフが丁寧に、細部の状態を確認しながら分解します。

ユニット3839Wのオーバーホール

エッジは一見、問題ないように見えますがべたつきが発生し劣化しています。またネットワークからの配線を受ける4つの端子も酸化、変形がみられます。磁気回路はひとつのマグネットで高域と低域を担う特殊な構造ですが、高域側も低域側も酸化が進行しています。ボイスコイルは高域側の引出部が酸化・腐食しています。

画像はクリックで拡大します。

丁寧にオーバーホールし、磁気には防錆処理を施したら、新しいエッジに交換し、動作調整をしていきます。ボイスコイル引出部が酸化していた高域側ダイヤフラムは、ボイスコイル再引出を行い、断線予防を施しました。

ネットワークオーバーホール

左右の音のバランス、音圧差の原因となる不良素子を交換、さらに半田や端子も劣化しますので、半田打ち直し、端子交換を実施しました。ユニットと接続する部分の端子は、変形や酸化により接触不良を引き起こす事例が増えていますので、これらも交換しました。

スピーカーターミナルは WBT0730(24Kコート)にて交換し、バナナプラグや太いケーブルも使えるようになりました。

エンクロージャー再塗装と組込み

もともときれいなエンクロージャーでしたが、天面にシミがあり、経年で少しくたびれた感じがありました。今回はお客様のご希望によりエンクロージャー全体の再塗装も実施しました。

年式の古いスピーカーになると、ユニットやネットワークを組み込む際にビス穴周りや足回りに補修が必要になることが多々あります。これらを見逃さないよう、細かく目を配り、適宜補修しながら慎重に組み込んでいきます。

組み込み後は発振器によるチェックを経て、ミュージックソースを1週間~10日程度鳴らしたのち、再度発振器にて細かくチェックし、修理完了となります。

修理完了後のTANNOY GRFMemory
すべての修理が完了した TANNOY GRFMemory

開発ストーリーも音も存在感も、何とも好ましく感じてしまう銘スピーカーです。
これからもすばらしい音を奏でてくれると思います。

TANNOY GRFMemory のような大型スピーカーの配送のご相談も承りますので、修理・オーバーホールをお考えの方はお気軽に お問い合せ ください。


TANNOY GRFMemory 修理概算価格

オーバーホール一式 ペア 250,000円(税込 275,000円)程度

※価格は予告なく変更する場合があります。
※スピーカーの状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。
※スピーカーターミナル交換、エンクロージャー塗装など別途オプションにて追加費用が発生いたします。
 この例同様の修理の場合は、ペア 420,000円(税込 462,000円)程度が目安となります。