Lowther はイギリスのメーカーで、日本では ローサー、ラウザーなどと呼ばれています。
ひとめでわかる特徴的な構造のユニットは、16センチ口径フルレンジユニットで PM4A、PM6Aなど複数のタイプがあります。
ここでは、このユニットの構造と、当社でのエッジ貼り替え、オーバーホールをご紹介します。
![Lowther PM4A/PM6A 修理完了](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-01.jpg)
まずはとても個性的な構造と特徴から。
- ダウンロールのウレタンエッジ
- サブコーンを備えた軽量のダブルコーン
- 真ん中の大きな電球型イコライザー
- 強力な磁気回路
- 背圧を抜く2本立てのフレームの柱
- ボビンの内外に巻かれたボイスコイル
などなど…いかにこだわって開発されたユニットかが明確に伝わってきます。
よく見ると、コーン紙に補強のラインがあるのが見えますね。
イコライザーの形はモデルにより異なり、今回の電球型のほか、黒くて細めの砲弾型があります。
今回は大阪府のAさまのご承諾を得て、実際の修理工程をご紹介します。
ご依頼はエッジ交換とオーバーホールでした。
まずはお預かり時の画像です。
エッジとダンパーの劣化が確認できます。このまま音を鳴らしてしまうと、コーン紙がまっすく振幅できないため、音が悪くなるだけでなくボイスコイルを傷つけてしまいます。
![Lowther PM4A/PM6A 修理前。エッジが劣化し、なくなっています。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-02.jpg)
![Lowther PM4A/PM6A 修理前。ウレタンのダンパー劣化状態です。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-03.jpg)
さっそく分解し、内部を確認します。
ダンパーもウレタンのタイプのため、エッジと同様にダンパーも経年劣化で崩れてしまっています(モデルによりゴム素材のダンパーもあります)。
ボイスコイルは問題ありません。
下の写真でご覧いただけるように、ボイススコイルのボビン(芯)の内側と外側の両方にコイルが巻いてあるのが特徴的です。
![コーン紙を抜き取り、ボイスコイルも確認します。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-04.jpg)
さらに磁気回路を露出すると、酸化やウレタン劣化物が散乱しているのがわかります。
中心のネジ穴はイコライザーが固定される穴です。
![酸化している磁気回路。ウレタン劣化物もあります。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-05-1.jpg)
ボイスコイルが入るギャップは非常に狭く、またギャップ内の小さな異物はビリつきやひずみなどの異常音の原因となります。
薄いコーン紙から古いウレタンも除去しなくてはなりません。
可能な限り分解し、フレーム、端子、磁気回路、コーン紙などを丁寧にオーバーホールをしました。
コーン紙を抜き取るとフレームを支える柱が、通常1本になるところを隙間をあけた2本組になっている構造が確認できます。
![クリーニングずみのフレーム。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-07.jpg)
![オーバーホール、防錆処理ずみの磁気回路。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-06.jpg)
クリーニングが終わったコーン紙にウレタンエッジとウレタンダンパーを貼ります。エッジはコーンの表面に接着します。
ウレタンのエッジとダンパーは当社の前身オーディオラボオガワが国内の専門家と相談しながら作成したもので、すでに多数の使用実績があります。
![ウレタンエッジを貼ったコーン紙。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-08.jpg)
![エッジとダンパーを貼ったコーン紙の背面。](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-09.jpg)
このとき、コーン紙、ボイスコイルボビン、エッジ、ダンパーというすべてのパーツのバランスを取って接着しなければ正常に動作しないため、パーツをよく観察し、オリジナルのゆがみなどにも注意しながら作業します。
コーン紙にエッジとダンパーを貼ったらフレームにセットして確認。
![エッジを貼ったコーン紙をフレームにセットした状態](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-10-1.jpg)
さらに、オーバーホールした磁気回路にフレームをセットし、発振器を使いコーン紙の振幅を確認しながら各部を固定し動作調整を行います。
動作調整が完了したら、各部接着剤がしっかり乾燥するまで24時間以上置き、その後再度発振器によるチェック、続いて48時間以上ミュージックソースを鳴らし、経時変化がないことを確認したら修理完了となります。
![修理完了のLowther PM4A/PM6A](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-11.jpg)
Lowther に限らず、JBL、ALTEC など、当社でお預かりするほとんどのスピーカーユニットでは、純正のダイヤフラムやコーン紙の入手は困難です。そのため、今のオリジナルパーツをいかによい状態で保持するかという視点がご愛用のスピーカーを長持ちさせるポイントだと思います。
エッジやダンパーが劣化したままコーン紙を振幅させたり、ギャップ内に異物がある状態で使い続けると、ボイスコイルに致命的な傷ができる可能性があります。
純正パーツに致命的な問題が起きる前に、オーバーホールをお勧めいたします。
修理のご相談は お問い合わせ からお寄せください。
Lowther PM4A・PM6A など 1本の修理概算価格
基本修理:ウレタンエッジ貼り替え、ウレタンダンパー貼り替え、磁気回路オーバーホール、動作調整 一式 38,000円(税込 41,800円)
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※ユニット個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。
※下の写真のように「角型のフレームがビス止め」になっているモデルは、フレーム固定ビス代が別途必要となる場合があります。
![角フレームタイプのLowther](https://relicfreq.com/wp-content/uploads/2022/05/lowtherpm6-12.jpg)