2021年4月に地元山形県鶴岡市のお客さまからご依頼いただきましたKEF104の修理をご紹介いたします。
KEF104は1973年に発売されたイギリス産のモニタースピーカーで、ユニット構成はツイーター、ウーハー、そして楕円型のドロンコーン(パッシブラジエーター)。
イギリス製らしい外観、そしてモニタースピーカーということもあり、色付けを感じさせないバランスの良さが魅力的なスピーカーです。
それでは、ご依頼品を見ていきます。
システムとしてチェックを行ったところ、片側のツイーターから音がでません。
REFのツマミを回すとガリガリノイズが乗ります。因みにこのツマミはツイーター側ではなく、ウーハー側のREF調整を行うユニークなシステムになっています。
ツイーターを外し単体で確認すると、片側が異常音でした(異常音でも音は出ていますので、スピーカーのツイーターから音が出ていない原因はツイーター単体ではなく、ネットワークにあるということになります)。磁気もかなり酸化していますので、オーバーホールと動作調整を行います。
オーバーホール後の磁気の写真を撮り忘れましたが、振動板を戻し、動作調整を行った完了品がこちらです。異常音は解消され、すっきりとしたきれいなツイーターになりました。
ウーハーは2本とも異常音。こちらも磁気の酸化がかなり進行しており、ボイスコイルが収まる狭いギャップ内にも酸化物がたまっていましたので、これによりビリ付きやボイスコイルのこすれが発生していました。きれいにオーバーホールをし、動作調整を行います。
こちらもオーバーホール後のギャップ写真がないのですが、ギャップはもちろん磁気の底も酸化物を除去し、防錆処理を施しました。その後コーンを磁気にセットして、動作調整を行いました。
ボイスコイルの動作を妨げる異物がなくなり、これでまた安心して鳴らすことができます。
ドロンコーンです。ドロンコーンには磁気はありませんが、やはり金属部分のサビを除去する必要があります。真ん中のリング状の部分に白サビ、赤サビがびっしり見えます。
オーバーホール後です。深いサビのあとはシミのように見えますが、防錆処理を施し、サビの再発を防止しました。
オーバーホール後のドロンコーン。防錆処理を施し、サビの再発を防止しています。
次はネットワーク回路です。
KEF104のネットワークはロータリスイッチプレートの下に隠れるほどの小さなもので、その小さな基盤上にコンデンサーとコイルが所狭しと並んでいます。
内部素子のチェックを行うと、大きくコンデンサー容量がずれていました。よく見るとコンデンサーに何やら析出物が付着しています。明らかに劣化していますので全て交換します。コイルは異常なし。
KEFのネットワークで使われているこのタイプのコンデンサーは、このようにダメになっていることが非常に多いです。
ノイズが乗るロータリースイッチは接点が劣化していますがクリーニングで改善できそうです。丁寧に接点をクリーニングします。
オーバーホール完了後のネットワークです。
コンデンサのみ交換し、スイッチのクリーニングを行い、基板上のはんだを打ち直しています。
コンデンサの質とサイズ、容量の調整はいつも頭が痛い問題になりますがうまく収まりました。
ユニット、ネットワークそれぞれの修理が完了しましたので単体でチェック後、実音チェック、エージングに入ります。
単体エージング後、異常がないことを再度確認し、エンクロージャへの組み込みを行います。エンクロージャーの状態でもしっかりと鳴らし込みながらチェックを行い、ようやくお客さまへお返しさせていただく段階となりました。
なお、ネットは約10年前に当社の前身であるオーディオラボオガワで貼り替えさせていただいており今もきれいな状態でした。今回は外観には手をかけず、音をしっかりメンテナンスしてほしいというご要望でした。
約50年前の銘スピーカー、これからもお楽しみいただければと思います。
KEF104の修理概算価格:200,000円~250,000円(税別)
※輸送費用は含みません。
※各部劣化、酸化の状態により修理費用は変動します。そのため当社では、正式な修理お見積もりは現物確認後とさせていただいております。
当修理は、私たちの前身「オーディオラボオガワ」にご予約をいただいていたものです。2021年7月現在、ご予約過多によりスピーカーエンクロージャー(ボックス)ごとの新規受付、新規ご予約は休止中です。ユニット単体、ネットワーク単体であれば、随時お預かり可能です。詳しくは お問い合わせ ください。