JBL N500H ネットワークの修理実例をご紹介します。
JBL 社を世間に知らしめたプロジェクトスピーカー Hartsfield へ組み込まれたネットワークであり、またこちらも有名な Paragon の初期型にも組み込まれているネットワークでもあります。
クロスオーバー周波数は500Hz。
上部にLFとHF接続用のターミナル、下部にINPUT用ターミナルがあり、中央にHF GAIN 3段階の切り替えスイッチがあります。当社でもあまり取り扱いのない機種です。
今回は新潟県のSさまのご承諾を得て、実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします。
まず動作チェックを行いますが、低域、高域共に左右で大きく音圧差が発生しています。また、スイッチを捻るとノイズが乗ります。これは内部素子が相当劣化しているのではないかと勘繰りながら、蓋をあけていきます。
内部はタール状のワックスが封入され、全く目視不可能です。これは…大変だと思いながらもこの状態で内部素子をチェックします。
コンデンサーの容量が大きく異なっています。
コイルまでも大きく数値がずれています。
やはり刻々と経年による劣化は素子を蝕んでいるようです。
全て代替品へ交換します。
切替スイッチは接点にアクセスできるオープンタイプ。
軸廻りのメッキが粉を吹いていますが、これなら接点クリーニングで改善できそうです。
何とか素子を撤去しました。
強烈なタール臭、どろどろベトベトとの戦いです。
当社では取り外した素子は基本的にお客さまへお返ししております。不良品ですが貴重なオリジナル。作業内容を知っていただくための証拠でもあります。
切替スイッチもクリーニングしています。分かりにくい写真で大変申し訳ございませんが、接点の不純物除去と半田の打ち直しを行っています。
コンデンサを交換しました。
ワックス内に沈めていきます。
今回コイルも交換していますので取り付け位置決めを慎重に行っています。
コイルは周囲の影響を受けてインダクタンスが変化します。限られたスペース内で定格値に合わせ左右の差もないように調整をします。
鉄箱で仕切られたネットワークで左右のコイルの位置が異なるものが良くありますがこの調整を行った結果、左右の位置が違うものになるんだろうなと修理をしながら感じます。
チェックを行っていると…片側の切替スイッチを動かすと高域の出力がありません。
どこかが接触不良になっています。
探っていると…ありました。
蓋裏の巻き線とスイッチの接続線はんだ部が鬆(す)になっていたようです。
修理の間に巻き線の位置を動かしていたので接点が離れてしまい、断線していた模様。巻き線のはんだを全て打ち直します。
これで全ての修理が完了しました。
ターミナルもクリーニングし、接点もきれいに改善しています。正面プレートもクリーニングしましたがエンブレム部は劣化が重度で、触るとボロボロと崩れていくようでしたので、可能範囲でクリーニングしました。
この後、実音チェック、エージングに入ります。エージングチェックののち、再度動作チェックを行い、経時による問題再現がないことを確認しました。
今回はネットワークの素子大部分を交換する大掛かりなものになりました。
本来は劣化がないといわれるコイルも実際には数値のずれが発生している場合があります。
ネットワークの不良が聴感上の違和感、不良に関わってくることも多々あります。
ネットワーク単体でのチェック、オーバーホールは勿論、ユニットをお預かりする際に合わせてネットワークも確認、オーバーホールをご検討ください。
興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。
JBL N500H ネットワーク 1本の修理概算価格
基本修理:不良素子交換、半田打ち直し、劣化端子交換、動作調整 一式 16,000円(税込 17,600円)
※交換部品代は別途
ネットワークは左右のペア調整が必須のため、必ずペアでのお預かりとなります。そのため修理概算価格は 16,000円×2本=32,000円 (税込 35,200円)程度とお考えください。
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内いたします。