JBL を代表するユニットのひとつ D130 のリコーン(コーン紙交換)をご紹介します。
D130 は口径は38センチ(15インチ)、アルニコマグネットのフルレンジで、アルミのセンターキャップを採用しています。
D130は JBL ユニットの原点ともいわれている銘ユニットです。
ジム・ランシングの驚異的な創造期ともいわれる1946年中頃に開発がスタートしており、かなり年式が古いものです。ご愛用者さまも多いようで、当社でも修理のご依頼は多数ございます。
なお、D130はエッジのタイプにより基本的な修理の内容が異なりますので、まずはそこからご説明します。
フィックスドエッジタイプ、ダンプ剤が塗布されたフィックスドエッジタイプ
コーン紙とエッジが一体の紙になっているフィックスドエッジがもっとも古い初期タイプ。
それにダンプ剤が塗布されているのが、その次の中期タイプです。
どちらもよく見るとエッジに亀裂や破れが生じている個体がほとんどです。
これらはオーバーホールに際し、振動系が温存できませんので、代替品によるリコーンが修理の前提となります。
これらのエッジは紙自体の老けにより、オーバーホールの工程でフレームからコーンを剥離する際にボロボロと破けてしまいます。50年も前の紙が長年コーンの振幅を支えてきたわけですから、仕方がないですね。
そのためリコーンが前提となるわけです。
コーン紙、ボイスコイル、ダンパー、ボイスコイル、モール線、コルクガスケットが新しくなります。
ダンプ剤が塗布された布エッジタイプ
これがもっとも後期のタイプです。
コーン紙と布エッジの間をよく見ると、境目があることがわかります。
このタイプは振動系に致命的な問題(ボイスコイル焼損、コーン紙破損、エッジの破れなど)がなければ、ほとんどの場合、コーン紙やボイスコイルを温存したオーバーホールが可能です。
仮に振動系に致命的な問題があった場合も、代替品によるリコーンが可能です。
なお、当社にある資料によりますと、JBL ブランドとしての D130 は、初期のタイプが16Ω、他は8Ωです。リコーンの際は、お預かりした時のインピーダンスに合わせたパーツを用いて修理しています。エッジはすべて初期タイプと同様のフィックスドエッジになります。
それでは、実際のご依頼品をもとにリコーンの修理実例をご紹介します。
こちらの D130は「断線、接触不良の疑いあり」というご相談でした。
そもそもフィックスドエッジタイプなのでコーン紙を温存した修理はできかねますが、断線、接触不良の直接の原因は「ボイスコイル引出部の酸化」でした。ボイスコイル自体が劣化しているので、この点から判断してもリコーンの修理となります。
D130 に限らず、年式の古いユニットはボイスコイルの巻線自体やモール線が酸化しているものも多くなっています。他に JBL 2231A、ALTEC 416A などもその傾向が高まっています(2024年6月現在、いづれも代替品によるリコーンは可能です)。
リコーンの場合でも、もちろん磁気回路の確認を行い、オーバーホールを実施します。
磁気回路は年式のわりに比較的きれいですが、この先も安心してお使いいただけるよう丁寧に酸化物を除去し、防錆処理を施します。
同時進行でリコーンのアッセンブリを作成します。動作調整がスムーズにできるよう、各部にゆがみや接着不備がないように作業していきます。
コーンのアッセンブリの準備ができ、磁気回路のオーバーホールが終わったら、動作調整を行います。
動作調整が完了したのち、新しいセンターキャップとコルクガスケットを接着し修理完了となります。
JBL 純正のコーンではなくなりますが、これまでも多数修理経緯があり、みなさまには喜んでいただいています。
エッジを含め新しいパーツになりましたので、エージングによる音の変化もお楽しみいただきながらたくさん鳴らしていただきたいと思います。
お気に入りの JBL D130 がございましたらぜひリコーン、オーバーホールをご検討ください。
修理のご相談は お問い合わせ からお願いいたします。
JBL D130 修理概算価格
代替品によるリコーン、オーバーホール一式(ペア):120,000円(税込 132,000円)程度
※価格は予告なく変更する場合があります。
※スピーカーの状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。
※リコーンはペアでの修理が必須となります。