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2022年6月にご依頼いただいたJBL 4425の修理をご紹介します。

存在感のあるバイラジアルホーンと黒いコーンが特徴の2Wayモニタースピーカー JBL 4425。
1981年に発売された4430というモデルを少し小さくして1985年に発売されたスピーカーが4425で、その後約20年間、JBLのモニタースピーカーの主力モデルでした。

当社オーバーホール後のJBL4425。ウーハーはエッジ貼り替えも行いました。
当社オーバーホール後(すべての修理完了後)の JBL 4425

1985年といえば昭和56年。貸しレコード店が大流行した頃。
なめ猫ブーム、ピンクレディー解散もこの年だそうです。懐かしく思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

さて、それでは修理をご紹介していきます。
なお、JBL 4425の民生用であるS101も同様の内容となります。

お預かりした時のJBL4425
お預かりした時のJBL 4425

お預かりした時の状態を確認します。
構成は、ドライバー2416H、バイラジアルホーン2342、30センチウーハー2214Hです。

一見きれいに見えますが、ホーン固定のビスがひどく酸化していて、経年劣化がうかがわれます。ウーハーはどこかでエッジを貼り替えてありますが、劣化しており、接着不備もあります。また黒い接着剤がコーン紙、エッジ、フレームなどに乗り上げています。

音は、左右ともドライーバー、ウーハーともに異音、ビリつきがあります。
アッテネーターを動作させた際にもザリザリと盛大にノイズがのります。

早速分解し、各個別にチェックします。

4425の特徴的なバイラジアルホーン
特徴的なバイラジアルホーン

このモデルの特徴ともいえるバイラジアルホーンですが、樹脂製で、ものによっては経年劣化で脆くなっているものもあります。取り外す際に割れ欠けがないよう慎重に作業します。

エンクロージャーから取り出したドライバー 2416Hは、磁気、ダイヤフラムを固定しているビス、ターミナルの酸化・緑青が確認できます。2416Hは何度も修理させていただいたことがありますが、いつも酸化重度の傾向にあります。

ドライバー 2416Hは酸化重度
2416H の外観から確認できる酸化状態

ダイヤフラムを取り外し磁気回路を露出すると、ギャップ内までひどく酸化していて、小さな酸化物のかけらも見えます。

2416H 磁気回路酸化状態
2416H 磁気回路酸化状態


ボイスコイル引出部(巻線の上部に立ち上がっている線)も、触れるだけで崩れそうな状態です。

2416H ボイスコイル引出部酸化重度
2416H ボイスコイル引出部酸化


2416Hは、幸いJBLの純正新品ダイヤフラムがありますので、オーバーホール後、ダイヤフラム交換、動作調整を行います 。

オーバーホールにより、ギャップの中まで酸化物を丁寧に除去し、防錆処理を施しました。

オーバーホール後の2416H 磁気回路
オーバーホール後の2416H 磁気回路


新品の純正ダイヤフラムをセットし、ビスも新しいものに交換。
スイープ音を出しながら動作調整をし、ドライバーの修理完了です。

純正ダイヤフラム交換後の2416H
純正ダイヤフラム交換後の2416H

続いてウーハー2214Hです。
どこかでエッジを貼り替えています。エッジの接着不備、劣化、黒い接着剤汚れが確認できました。取付用のビス穴にもさびが見えます。ウーハーはオーバーホール後、当社のウレタンエッジで貼り替えを行います。

オーバーホール、エッジ貼り替え前の2214H
オーバーホール、エッジ貼り替え前の2214H

ユニットを横から見ると、マグネットに接している部分が酸化している状態がわかります。
このような場合は、内部も酸化しています。

2214Hの外観から確認できる酸化状態
2214Hの外観から確認できる酸化状態

コーン紙を抜き取った磁気です。空気孔のウレタンが崩れ、ギャップ内も酸化していることがわかります。

214H 磁気回路酸化、ギャップ内酸化
2214H 磁気回路酸化、ギャップ内酸化

ウーハーのボイスコイルです。一部傷つき、酸化していることがわかります。
ただし2214HのコーンアッセンブリはJBLからの供給はとうに完了しておりますので、交換はできかねます。そのためお客様に状態をご報告のうえ、可能範囲での抗酸化処理をして再利用することにしました。

2214H ボイスコイル傷、酸化
2214H ボイスコイル傷、酸化

このように、ボイスコイルも酸化していきます。
特にギャップ内に酸化物があると、それが原因でボイスコイルが傷つき、音が出なくなったり、さらには修理ができない状態にまで悪化することにもなりますので、ぜひ早めのオーバーホールをおすすめします。

さて、ウーハーのオーバーホールが完了しました。
ギャップ内も端子もきれいにクリーニングしました。オーバーホールをおろそかにすると、この後の工程も難しくなり、また最終的にビリ付きが発生したりします。当社ではオーディオラボオガワ時代から徹底したオーバーホールを行っています。

2214H 磁気回路オーバーホール完了
2214H 磁気回路オーバーホール完了

横から見てもこの通り、酸化物をクリーニングしました。

2214H 磁気外周も酸化物除去、防錆処理
2214H 磁気外周も酸化物除去、防錆処理

ウレタンエッジを貼り替え、動作調整が完了しました。

2214H ウレタンエッジ貼り替え、動作調整完了
2214H ウレタンエッジ貼り替え、動作調整完了

次はネットワーク回路です。
2Wayのスピーカーということもあり、非常にシンプルな構成になっています。

オーバーホール前のネットワーク

内部素子のチェックを行うと、素子は問題がありません。
ネットワークオーバーホールの内容としては、素子はそのまま生かし、腐食した半田の打ち直しとアッテネーターの交換、端子類の交換となります。

腐食が進行しているアッテネーター

アッテネーターは見てのとおり背面が腐食でボロボロです。
動作時のガリもあるため、代替品と交換します。

よく見ると半田および裸線部の劣化も見てとれます。
見えないスピーカーの内部において環境の影響を受け、いかに経年劣化が発生しているかがご理解いただけると思います。

修理作業完了後のネットワークです。

半田打ち直し、アッテネータ交換済み

アッテネーターの全交換を行い、基板上のはんだを打ち直しています。
これをボードに組み付けてオーバーホール完了です。

ネットワークオーバーホール完了

ネットワークもオーバーホールが完了しました。
ファストン端子も金メッキ代替品へ交換しています。

ユニット、ネットワークとも修理が終わると、動作チェック後、エージングに入ります。
この単体エージングによって異常がないことを確認し、ようやくエンクロージャへの組み込みの段階へ入ります。

組み込みが完了しました。

すべての修理完了後のJBL4425

各部固定ビスやホーンもきれいになり、生まれ変わりました。
スピーカーターミナルはお客様のご希望でWBT 0730 へ交換しました。

年代の古い JBL のターミナルはプッシュ式のものがついていますが、ターミナルを交換することでより太いゲージのスピーカーケーブルへの対応やバナナプラグへの対応が可能となります。高級感もあり、品質も折り紙付きのターミナルですので交換をすすめいたします。

古いスピーカー、メーカーで修理を断られたスピーカーも、このように甦らせることができるケースが多々あります。
お気に入りの音をこれからもお楽しみいただけるよう、当社は最善を尽くします。

スピーカー修理のご相談はお気軽に、お問い合わせ からお願いいたします。 


JBL 4425 修理概算価格:200,000円~280,000円(税別)程度

※輸送費用、ターミナル交換は含みません。
※各部劣化、酸化の状態により修理費用は変動します。そのため当社では、正式な修理お見積もりは現物確認後とさせていただいております。