公開日:

AXIOM80 エンブレム
GOODMANS AXIOM80

特徴的な構造を持つ、20センチ口径の美しいフルレンジユニット AXIOM(アキシオム)80 の修理をご紹介します。

AXIOM80は、エッジやダンパーの代わりにカンチレバーで振動系を支持しているというとても珍しい構造のユニットです。
ダブルコーン、そして赤く塗られたマグネットも印象的。このマグネットは「チコナル」というもので、初期のTANNOYやVITAVOXなどで採用されていたそうです。


AXIOM80 には小さなビスがとにかくたくさん使われていて、いかにバランスを取りながらこれらを締めていくかというのが修理の肝となります。

AXIOM80 お預かり時正面。センターキャップがなく、磁気回路の酸化が見える
お預かり時の正面(中心の磁気が酸化しているのが見えます)
AXIOM80 のうつくしい赤いマグネット
赤に塗装された美しい磁気

お知らせいただく不良の症状は、ほとんどがビリツキ、歪み、センターズレです。

分解し、適宜補修しながらオーバーホールしていきます。

前面のフレームを慎重に外します。
二股に分かれたカンチレバーの張りが1本ずつ異なることがわかりますね。

フレームを外すとカンチレバーが見える
前面フレームを外した状態

ダンパー代わりのカンチレバーもすべて外すと、磁気回路が露出します。

さびが発生している磁気回路。ギャップ内にも酸化物、異物がある
酸化している磁気回路

狭いギャップ内まで酸化しているのが確認できます。AXIOM80 にはセンターキャップ(ダストキャップ)もないため、ギャップ内に異物や酸化物が入っていき、ボイスコイルが擦れ、ビリツキや歪みが出てしまいます。

外れたコーン紙側はこちら。

ボイスコイルとダンパー代わりのカンチレバー
ダンパー代わりのカンチレバー

ダンパー代わりに、3カ所のカンチレバーで振動系を支えています。

カンチレバーは、コーン紙側に接着剤で固定されています。しかし、接着材も経年で劣化しますので、カンチレバーがコーンから取れてしまうこともあります。

カンチレバーが外れたコーン紙
コーンからカンチレバーが取れてしまった状態

必要に応じてカンチレバーの補強や、コーン紙への再接着をしますが、接着の場所・角度・向き、接着剤の量、そしてフレームへのビス固定にて、全体的に繊細な調整をしなければなりません。
ギャップも狭いので、とても細かく慎重さが求められるしごとになります。

一歩一歩、作業をすすめ、すべての調整が終わりました。
写真が青っぽく映ってしまっていますが、上記と同じ個体です。

すべての修理が完了したAXIOM80
修理が完了したAXIOM80

特に繊細なユニットですので、スイープチェック、音楽を鳴らしてのチェックを十分に行いました。

AXIOM80 は年式が古く、交換部品もなく、調整が困難なユニットのひとつですが、愛用されている方がいらっしゃる限り何とかお役に立てればと思っています。

艶やかな音がこのユニットの魅力のひとつといわれますが、このコーン紙は吸湿性が高く、梅雨時期には音が変わるそうです。
扱いが難しいからこそ、狙い通りの音が出せたときの感動が大きいのかもしれませんね。

お手持ちの AXIOM80 も甦らせることができるかもしれません。
修理のご相談は お問い合わせ からお願いいたします。


GOODMANS AXIOM80 1本の修理概算価格

基本修理:磁気回路オーバーホール、動作調整 一式 60,000円(税込 66,000円)

※価格は予告なく変更する場合があります。
※年式の古いユニットで個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。