アメリカの ElectroVoice(エレクトロボイス)の2Wayスピーカー Sentry100A SFV の修理をご紹介します。
このスピーカーは、1980年代のモデルでモニター用として開発されました。
ユニット構成は、表面のウレタンが特徴的なツイーターと、20センチ口径のウーハーです。
今回は千葉県のSさまよりお預かりしたスピーカーでご紹介します。
お客さまより事前にお知らせいただいた状況は主に次の3つです。
- 全体的な経年劣化による各種パーツ(ウレタンスポンジ等)の破損
- 音の濁り、曇りや音量の左右差
- 片方は明らかに音の出が悪い
いずれも当社のオーバーホールで改善可能と判断し、修理をお任せいただきました。
では、お預かりの状態から。
エンクロージャーはとてもきれいでした。
当モデルのツイーターは、どれも同じだと思いますが、表面ウレタンが劣化しています。ウーハーのエッジは劣化していませんが、左右で色が異なっています。エッジはロールのなだらかな形状が独特ですね。
では、分解しながらそれぞれ細かく見ていきます。
ツイーターは表面ウレタンだけでなく、内部ウレタンやスペーサーの劣化、モール線の酸化がみられます。今回、片チャンネルはモール線の酸化が進行し音がでなくなっていました。
オーバーホールの工程では、磁気の酸化物を除去し防錆処理を施した後、劣化したウレタンを交換し、磁性流体も入れ替えます。
フランジの劣化したウレタンも除去します。
ダイヤフラム側もクリーニングし、モール線を交換しました。
この後、磁気にダイヤフラムをセットし、発振器で音を出しながら動作調整をします。
表面のウレタンは、ツイーターをエンクロージャーに取り付けた後に貼ります。
ウーハーはエッジの色味が異なりましたが、取り出してみると磁気やフレームも異なっていました。海外製のスピーカーでは比較的よくあることですが、スピーカーを分解してみないとわからないことですね。
ウーハーをペアで揃えることは困難なので、お客様と相談のうえ、このペアを活かしエッジ貼り替えとオーバーホールをさせていただくことになりました。
ネットワークは素子不良に起因する左右の音圧がありますので、素子を交換し各部半田を打ち直します。
今回はネットワークがエンクロージャー内にがっちりと接着されていたため、やむを得ずウーハーの穴からオーバーホールを行いました。エンクロージャーを傷つけないよう細心の注意を払いながらの作業となりました。
アッテネーターの接点クリーニングも行い、ユニットをエンクロージャーに組み込みました。
この後、発振器で動作確認をし、1週間程度、さまざまな音楽を鳴らしてエージングチェックを行います。
1週間後、経時変化がないことを確認したら、最後の仕上げとしてツイーターの新しい表面ウレタンを貼ります。
音も外観もきれいに甦りました。
修理後は、ご家族で楽しんでいただいているとお知らせいただきました。これからもご家族と Erectrovoice とともにすてきな時間をお過ごしいただければうれしいです。
ELECTROVOICE Sentry100A SFV はコンパクトなサイズのため宅配便での輸送が可能です。
修理のご相談は お問い合わせ からお願いいたします。
★ツイーター用表面ウレタンは、2024年8月より特別販売中です。
ELECTROVOICE Sentry100A SFV 修理概算価格
オーバーホール一式 ペア 200,000~230,000円(税込 220,000~253,000円)程度
※価格は予告なく変更する場合があります。
※スピーカーの状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。