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日本を代表するモニタースピーカー Diatone(ダイヤトーン) 2S-305 の修理をご紹介します。
Diatone 2S-305 は、NHK技術研究所と三菱電機が共同開発し、終戦からわずか13年後の1958年に三菱電機から発売されたスピーカーです。容量たっぷりのエンクロージャーには、当時の日本人の「希望の塊」が詰まっているような気がしますね。

レリックで修理済みのDiatone 2S-305 ペア。サランネットも張り替えています。
レリックで修理済みのペア

今回は北海道の F 様からお預かりしたスピーカーにて実際の修理・オーバーホールの工程をご紹介いたします。今は亡きお父様が1979年に購入されたスピーカーとのことで、一層、身が引き締まる思いでお引き受けしました。

さっそくお預かりした状態と必要な修理を見ていきます。

お客様からお預かりした状態のDiatone 2S-305 ペア。ウーハーの異常音とサランネットの変色があります
お預かりしたペア

音出しと外観のチェックをしたら、分解し、ユニットやネットワークを外していきます。
写真はクリックで拡大します。

TW-25(ツイーター) 

コーン型のツイーターです。動作異常はありませんが、内部ウレタンが劣化し、ボイスコイル引出部が酸化しています。オーバーホールに加え、当社で作成している代替ボイスコイルと交換します。

PW-125(ウーハー) 

左右共に異常音で、このウーハーユニットの特徴のひとつであるメカニカルフィルターが劣化し朽ちています。メカニカルフィルターは1500Hz以上で高域を減衰させるという役割を担う重要なパーツです。当社で作成している代替パーツにて貼り替えます。

HP-170(ネットワーク)

緻密なスピーカー設計によりツイーター専用のシンプルなネットワークになっています。左右共に動作異常はありません。経年劣化を考慮し、半田の打ち直しと配線接続部の接点クリーニングなどを行います。

ターミナルとサランネット

ターミナルは特殊な4Pのキャノンコネクタが使用されています。大事な信号の入り口ですので、劣化を考慮し代替品で交換します。サランネットは経年により変色しています。細かく丁寧に打たれたステープルを1本ずつ外し、枠の状態を確認し、近似代替生地で張り替えます。

オーバーホールのご紹介

ここからはオーバーホール中、オーバーホール後の写真です。当社のオーバーホールでは、オリジナルを尊重しつつ、可能な限り分解し、丁寧にクリーニングや補修、補強などを行っていきます。

すべての修理が完了した Diatone 2S-305

ネットの張り替えはオプション項目となり、お客様のご希望により実施させていただきました。各ユニット、ネットワークもオーバーホールにより本来の性能を取り戻しています。

すべての修理が完了した 2S-305 から流れ出てくる音は、現代のスピーカーに比べると帯域こそ広くはありませんが、特にボーカル帯域がとてもクリアで、それでいて温かみが感じられるような素晴らしい音色でした。

お客様にはこれからも末永く楽しんでいただきたいと思います。

2s-305 が素晴らしい初期性能を発揮するためには、ウーハーのメカニカルフィルター交換が必須です。
2S-305 をお持ちの方はぜひ、お問い合わせ から修理をご相談ください。輸送のご相談にも応じます。


Diatone(三菱電機) 2S-305 ペアの修理概算価格

オーバーホール 一式 250,000円(税込 275,000円)程度

※価格は予告なく変更する場合があります。
※スピーカーの状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。
※オプションのサランネット張り替えを含めると総額はペアで 330,000円(税込363,000円)程度です。
※送料は別途必要です。


【最後に】

ダイヤトーンスピーカーの開発設計に従事され、多くのスピーカー新技術を開発された 佐伯 多門さんのお書きになったとても貴重で興味深い記事をご紹介します。日本オーディオ協会様のサイト内記事へのリンクです。

Who’s Who オーディオのレジェンド 第4回 ダイヤトーンに生きる
その1 https://www.jas-audio.or.jp/jas_cms/wp-content/uploads/2015/12/201511-076-080.pdf
その2 https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2016/01/201601_084-092.pdf
その3 https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2016/03/201603_048-056.pdf