CORAL Ⅹ-VIIという3Wayスピーカー用のネットワークの修理実例です。
CORAL(コーラル)社は今はなき日本のメーカーですが、コーン紙生産から始まりユニットメーカーそしてシステムメーカーへと変遷し、オーディオ群雄割拠の時代に BETA-8 や BETA-10 など個性的なスピーカーを残した会社です。
この CORAL Ⅹ-VII は1979年発売で、当時のライバル機 YAMAHA NS-1000M を強く意識した構成のスピーカーのようです。
ネットワークはこちら。クロスオーバー周波数は470Hz、5KHz。
High、Midにはそれぞれアッテネーターがついています。
それでは、今回は宮城県のSさまのご承諾を得て、実際のオーバーホールの工程をご紹介いたします。
お預かりした時の不良内容は「片側の Mid の音が出ない」とのことでした。
まずは動作チェックを行います。
なるほど初期状態で片側 Mid が出力していません。
アッテネーターをバイパスすると音が出ますので、どうやらアッテネーターが断線している様子です。
残りのアッテネーターも回すたびに両方ともザリザリとノイズが乗ります。
出力に関しては全ての帯域で左右の音圧差が発生しています。
この状態で内部素子をチェックします。
コイルは問題なし。コンデンサー容量、抵抗の値が異なっています。
数値の異なるコンデンサー、抵抗は左右共に代替品へ交換します。
右下の電解コンデンサーだけでなく、左上、左中央のメタライズドフィルムコンデンサにも差異が出ています。
1979年の発売ということは40年ほどの時間を経ていることになります。
年相応の劣化があるのでしょうか。
正常なものは残しつつ、不良品は現行品へと交換します。
通電不良が発生しているアッテネーターも新規代替品へと交換します。
素子交換後の状況です。
抵抗、コンデンサーを交換し、左右の音圧差も解消しました。
コンデンサーはネットワーク使用に耐える入手可能なもので容量を調整することと、既存スペースの確保を考慮することが大変です。今回もスペース確保が大変でしたが何とか収まりました。
アッテネーターは全て交換しました。
これで導通不良や接点劣化によるガリノイズとは無縁です。
基盤の半田も全て打ち直しています。
ユニットと接続するファストン端子は劣化が見られたため代替品へ交換しました。
ユニットの接続部や入力ターミナル部の接触不良は、音が出ない原因となっていることがあります。ユニットもネットワークも異常がなく、なぜだろうとチェックしていると接続部を触ることで音が復活することがあります。コネクタタイプのものは特に注意が必要で、内部でコンタクトが錆びているなんてこともあります。
ユニットとネットワークを同時にお預かりできれば、オス・メス共にチェック、改善ができますので万全のメンテナンスができます。
この度のネットワーク修理が完了しました。
この後、実音チェック、そしてエージングに入ります。
エージング後は再度動作チェックを行い、経時による問題再現がないことを確認してお客さまにお返しいたします。
ネットワークが原因で音が出なくなるということは経験上少ないのですが、今回の事例では部品類の劣化によって起こりえるということをご説明できたと思います。
ネットワーク単体でのチェック、オーバーホールは勿論、ユニットをお預かりする際に合わせてネットワークも同様に確認、オーバーホールをご検討頂くことをお勧めいたします。
興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。
CORAL Ⅹ-VII用ネットワーク 1本の修理概算価格
基本修理:不良素子交換、半田打ち直し、劣化端子交換、動作調整 一式 12,000円 (税込 13,200円)
※交換部品代は別途
ネットワークは左右のペア調整が必須のため必ずペアでのお預かりとなります。
そのため、修理概算価格は 12,000円×2本=24,000円(税込 26,400円)+部品代 程度とお考えください。
※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。