1962年に発売された8インチ径のコーン型フルレンジユニット「LE8T」。LE8の後継機で、言わずと知れた JBL の名ユニットです。白いコーンが印象的で、20センチ程度のサイズながら、JBLサウンドを満喫できる素晴らしいユニットとして多くのファンを虜にし続けています。

オーディオラボオガワ時代から、当社でもこれまでたくさんのお客様とこのLE8Tについてお話しし、修理ご依頼をお受けしてきました(最も多くお預かりするユニットのひとつです)が、多くの方がハチティー、パッティーなどと呼び、今も大切に使っていらっしゃいます。

SANSUI SP-LE8T
オーディオラボオガワで修理させていただいた SANSUI SP-LE8T

かつてあるお客様が「学生時代に恋い焦がれて買った8Tなんだ。たとえ音が出なくなって、修理できなくなっても大事に持っておくよ」と、胸の内をお聞かせくださったことがあります。いかにLE8Tが特別なスピーカーユニットであるかがよくわかるお客様の一言でした。ちなみに そのときは「ボイスコイルが焼けていてもうちでは交換できるから大丈夫ですよ!」とお話をさせていただきました。

当社では、ウレタンエッジ貼り替え(交換)だけでなく、8Ωのボイスコイル、アルミのセンターキャップの交換も可能です。過入力でボイスコイルが焼けてしまったり、ばらけてしまって音が出なくなったユニットも、アルミのセンターキャップが凹んだユニットも、コーン紙が無事であれば、修理が可能です。

JBL LE8T 修理に利用する各種パーツ
修理に使用するパーツ(コーン紙のみお客様の物)

ハーマンからのパーツ供給が終了した中、なんとかこのユニットを活かしたいという考えにより、 当社の前身オーディオラボオガワ時代に「オリジナルに準じた品質で」と各専門家と相談しながら材料を選定し、起型し、サンプルを作成してもらい、実際にユニットに貼って音の確認をしたうえで修理パーツとして採用したものです。

ではまず、お預かり時の状態から(わかりやすさを優先し、いろいろなお客様のLE8T・LE8T-Hの写真を掲載しています)。

JBL LE8T お預かり時の状態
ウレタンエッジが劣化しているLE8T

ウレタンエッジが劣化しています。 ウレタンエッジは経年により劣化し、コーンを支えることができなくなっています。ちなみにランサロイエッジが貼られているユニットもありますが、ハーマンでもウレタンエッジでの貼り替えを推奨しておりましたので、当社でもウレタンエッジに交換します。

アルミのフレームにも酸化、黒ずみ、汚れがみられ、センターキャップはくすんでいます。

では、修理を始めます。
白いコーンがこれ以上汚れないよう、丁寧にウレタン破片を除去します。ダンパーも剥離し、振動系すべてを取り外してみると、やはり中はさびています。この酸化物のかけらがギャップ内に入ってしまうとびりつきの原因になるため、磁気回路をオーバーホールします。

コーン紙を外した状態
黄色い粉状の酸化物、赤錆が発生し、ギャップ内にも入り込んでいます

磁気の酸化物を除去し、防錆処理を施します。酸化物を除去する作業は時間もかかり根気もいる作業ですが、ここをしっかり行わないと、最後の動作調整時にビリ付きがでてしまうため、丁寧に行います。ターミナルを固定しているビスも酸化しているので交換、そしてターミナルもクリーニングし、導通を改善します。

当社のオーバーホール後の磁気

次はボイスコイルの交換修理です。
故障しているアンプに繋いだり、ちょっとした確認不備で過大入力をしてしまうと音が出なくなる場合があります。その場合、ボイスコイルが焼けたり、ばらけてしまっているので、ボイスコイルを交換します。

ボイスコイルが焼けています。白い粉は酸化物
ボイスコイルがばらけ、ねじれています

装着されているボイスコイルを取り除き、新しいボイスコイルをセットします。

コーン紙に当社のボイスコイルを装着

古いユニットになるとコーン紙自体が経年で曲がっていたり、傾いていたりすることがしばしばありますので、元々のパーツの状態をよく観察しながら取り付けます。

そしてアルミのセンターキャップ交換修理。
アルミのセンターキャップは、通常使用の中で傷がついたり、くすんだりするだけでなく、ペットやお孫さんにいたずらされて凹んだでしまった…という微笑ましいエピソードもよく伺います。

アルミのセンターキャップがつぶれています。

ペットやお孫さんのいたずらはかわいい思い出として取っておきたい気もしますが、センターキャップの大きな傷、凹みは外観だけでなく音にも影響がありますので、貼り替えさせていただきます。(ボイスコイル交換にはセンターキャップ交換も含まれています)。

コーン紙の方も古いエッジを除去・クリーニングしたのち、新しいウレタンエッジを貼り、防錆処理が終わった磁気にセットします。 ボイスコイルがギャップの真ん中できちんとストロークしていることを確認しながら、見た目も美しくなるよう丁寧かつ速やかに貼り付けていきます。

修理完了(センターキャップ、ウレタンエッジ貼り替え後)

さらに「この際音だけでなく外観もきれいに!」という場合は、オプションでフレーム研磨も可能です。フレームもまた、経年で酸化し、黒ずんでいるものがほとんどなので、再研磨することで外観も美しく甦ります(写真は8T-H。深い傷は残る場合があります)。

エッジ貼り替え、 センターキャップ交換、 フレーム研磨後の修理完了

JBLの傑作ユニット、LE8T・LE8T-H。
レリックでは、お客さまの思い入れを大事に、そしてこれからもユニットが気持ちよく鳴ってくれるよう、ひとつずつ丁寧に修理させていただきます。興味をお持ちいただきましたら、お気軽に お問い合わせ ください。


JBL LE8T / LE8T-H 1本の修理概算価格

基本修理:エッジ貼り替え(オーバーホール、動作調整含む)一式 27,500円

 センターキャップ交換:基本修理に 12,500円 追加

 ボイスコイル交換(センターキャップ、モール線交換含む):基本修理に  30,000円 追加

 前面フレーム再研磨:基本修理に  7,000円 追加

※価格はパーツ作成費などの影響で予告なく変更する場合があります。
※ユニット個々の状態はさまざまですので正式なお見積りは現物確認後にご案内します。